ずいぶんと前に
大好きだった人が言ってた。

「親父が死んで毎日泣いていたお袋も、今は普通に笑って暮らしてる。
人の悲しみっていうものは、いつか必ず時が癒してくれるものなんだよ」

その時は理解できんかったよ。


その後わたしも、とても辛く悲しい現実にぶち当たって
その時、もう生きる意味はないと思った。
心穏やかに、ああ、今死のうと思えた。

幸か不幸か生きながらえてしまって
その後も自分が崩壊するまで苦しみ続けた。


でも、今やから言えるんやで。
こんなわたしやから言えるねんよ。
ほんとうに時っていうものは、痛みを癒してくれるんやで。
だから今、どんなに辛い思いをしても、大丈夫やで

その痛みは永遠には続かんよ。

いつか長い人生の中の通過点になる。



そんな話を二時間くらい、
道端に座って涙ながらにした。
大丈夫やで、乗り越えられるでって。

この人が泣くところを見るのは、一体何十年振りか。




***

そう話したけど

そうやって乗り越えられたことも
もう、きついかなぁ
わたしには。

いつか、時が癒してくれることは知っている。
でも、もうこの年になると
大きな傷が癒えるまで、どれだけの体力と時間が要るんやろ。

大きな幸福など要らないけれど
ただ、もう痛い想いはしたくないな


道端に座ったまま思う。
さあどうやって帰ろう。
ご芳名
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